新たな自分に出会う情報発信誌 VIVO 2012年冬号 第28号

新たな自分に出会う情報発信誌 VIVO 2012年冬号 第28号 page 6/24

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概要:
VIVO Peopleいきいき生きる人達の群像「人生もう終わりだ」と思った瞬間、その人の輝かしい人生は幕を閉じる。だが、幕を閉じてしまいそうな出来事が起こっても、何とかやり過ごし、かえって残りの人生をより輝かし....

VIVO Peopleいきいき生きる人達の群像「人生もう終わりだ」と思った瞬間、その人の輝かしい人生は幕を閉じる。だが、幕を閉じてしまいそうな出来事が起こっても、何とかやり過ごし、かえって残りの人生をより輝かしいものにしてしまう人もいる。日置紀代子さん(74)は、二度も命を落としそうになった。だが、それが運命であったと言えるかもしれない。見事に生還し、左半身が使えなくなるという障害を残しながら、制作活動に励む毎日を送っており、そんな生活もかれこれ一五年続いている。それは傍目から見て、決して必死でもなければ、現実を忘れるための手段でもない。好きな物づくりを楽しむために、ゆったりと、急ぐ必要のない、充実した時の使い方をして過ごす毎日。油絵であったり、布の小物であったり、陶芸であったり…作品づくりがリハビリとなり、まったく動かなかった左手も左足も、自分の作業の助けとなるくらいまでに回復した。膝に押し付けて固定し、針を動かす。障害がなければ何の苦労もなかったはずだ。縫製の仕事に励んでいた紀代子さんにとって、何でもなかったその作業が、今では一つ一つに時間がかかる重労働だ。だからこそ、油絵の筆のタッチは力強い。布小物のうさぎの目はなんとも優しい。そんな紀代子さんの作品の一番のファンは、ご主人の八郎さん(76)。手となり、足となり、時には物静かな紀代子さんの口となって、作品をどんどん世に送り出していく。大切な作品をカメラに収め、「ほら、こんなものも」と次々と披露してくださる。隣では謙虚で恥ずかしがりの紀代子さんが照れたように微笑む。なんとも微笑ましいご夫婦だ。八郎さんがヘルパー二級の資格を取ったのは六〇歳を過ぎてからのことだった。それはいつでも紀代子さんの側にいたいという八郎さんの熱い思いからだった。仕事をしながらの勉強は大変だったが紀代子さんのためと思うと、その勉強も楽しさに変わった。仕事として紀代子さんの介護をすることはないが、愛情に裏打ちされた日頃の行動は、資格云々ではなく、心のありようなのだろう。まさに「寄り添っている」という雰囲気が伝わってくる。そして何より明るく屈託のない八郎さん。物静かな紀代子さんとは好対照。絶妙なコンビの作品づくりは、これからも続いて行く。紀代子さんが作り出す微笑ましい程の作品の表情は、八郎さんの心と行動が表現されたものなのかもしれない。■作品の展示・販売ギャラリー&カフェ淡墨香房T EL090―4797―6742▲優しい表情が愛らしい作品の数々▲一筆一筆、力強いタッチで描かれた油絵寄り添う二人で作り上げる微笑ましい作品日置八郎さん紀代子さん4VIVO